熈代勝覧タイトル十軒店

お江戸日本橋の風俗絵巻をゆく2十軒店周辺

今川橋から本銀(しろがね)町、本石(こく)町を過ぎると十軒店。古くから十軒の商店が連ねていたことに由来する町名。火除け地としての広い日本橋通りは類焼を防ぐために常設の小屋は禁止されます。がしかし、ここには季節ごとに仮設の出店が集中して、日本橋の四季を彩る風物詩となります。

2古地図:嘉永三年(1850年)日本橋北内神田両国浜町絵図より十軒店
日本橋北内神田両国浜町絵図より十軒店。

熈代勝覧絵巻では雛人形の出店、雛市がたっています。これによって絵巻の季節は桃の節句の頃だとわかります。

にぎやかな十軒店
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お江戸日本橋の風俗絵巻をゆく1
今川橋周辺

本銀町から本石町へ

銀町から石町に入ると時を告げる鐘撞堂。今は十思公園(伝馬町牢獄跡)へ移設されています。

時の鐘
十思公園の時の鐘。
通白銀町から石町
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印は以下に拡大画像と注釈があります。

町の情報屋・按摩さん

按摩さん

商家に入ってゆく按摩さんはマッサージの腕はもちろんのこと、話術も達者。店々で仕入れてきた話題を密室でこっそりと話す町の情報屋。

貸し本屋

貸本屋

寺子屋教育のおかげで、お江戸の識字率は70〜90%。しかも活字では無く、私たちが読めない「くずし文字」を読んでいたわけで驚きです。
武家御用達の商家では武鑑、切絵図、幕府役職一覧は必須。その他、源氏物語など古典の注釈書が人気だったというので教養レベルは相当なもの。
日本橋通りには多くの貸し本屋が歩いています。

鮓売り

寿司売り

店舗・屋台が無くとも売り歩くものはお江戸で大人気のファーストフード・鮓。

門付けの坊主

角つけの坊主

店先で、踊りながら「阿呆陀羅経」(あほだら経)を読み上げ芸をする下級の坊主。芸人といえども仏道の者。「無下にすれば家運は没落」とゲンを担いだ商家はおひねりをあげぬわけにはいかぬ。厄介な存在。

良家の美しき娘

美人娘に振りかえる

みな振り返って見る着飾った上品な娘さんはお供を四人も連れています。さぞや由緒ある大店の娘さん。

玉鮓

玉鮓

扇屋庄兵衛が屋台から始めて開店。この頃は握りよりも仕出しが中心の名店。店頭には頼んでもいないのに門付けの女芸人ふたりが踊り客引きをしています。

稽古帰りの冴えない武士

稽古帰りの武家の一行

稽古用の槍と胴着、木刀を担いでトボトボと歩く武士。出世のためには大切な武術練習。

悪酔いした旦那

吐く人

日本橋の朝は早く昼から呑むのが当たり前。悪酔いした旦那に野良犬が寄ってきています。「江戸に多きもの伊勢屋、稲荷に犬の糞」と謳われたように、熈代勝覧絵巻には犬が20匹、屋号「伊勢屋」が5軒も描かれています。

鏡研師・藤原定治

鏡研師・藤原定治

江戸時代の鏡は高級品。銅を主体にした金属をピカピカに磨く研師は一流の職人。

番屋の鳶職

鳶職

番屋の前で親方に何やら指図を受けている鳶職は、町雇いの自警団兼火消し。自警団の時は錫杖を持ち、町の警備、ケンカの仲裁、自分も熱くなってケンカの当事者に。ふだんは普請現場の足場を飛び回っています。

通石町
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力自慢の青竹売り・板売り

竹売り板売り

大量の青竹をテコ棒を巧みに使って運ぶ青竹売り。板売りといっしょのところを見ると建築資材としての青竹。

高利貸し

高利貸し

武士にあからさまに指を差される人物は袈裟姿からみると本堂再建名目で寄付金を集め、それを高利で貸し利息を得る高利貸し。「仏罰があたるぞ」などと言われている模様。

地唐紙卸の丸屋

地唐紙卸の丸屋

日本橋の出島と云われたオランダ宿「長崎屋」が現・新日本橋駅近くにあり、将軍謁見のための常宿とされます。

新日本橋駅

長崎屋跡
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日本橋の光景を盗み見たオランダのカピタン(船長)は日記に「日本人は貴重な紙で鼻を噛んでいる。驚くべき贅沢」と書いています。
唐紙とは厚手の紙。他にも揉み紙、茶紙などが江戸では安定供給され、浮世絵、出版文化が芽生えてゆきます。

十軒店

十軒店の雛市
十軒店の雛市(クリックで拡大)。

市のたつ十軒店は今のコレド室町テラスあたり。日本橋通りに面して説明板が立っています。

コレド室町テラス

十軒店説明板
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十軒店
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虚無僧

虚無僧

尺八を吹くスタイリッシュな虚無僧。高下駄を履き傘を被っているので背が高く見え、顔を見せないのでクール。虚無僧は剃髪しない半僧半俗な存在なので日本橋には多く出没。ジャニーズ風な者もいてファンもついたとか。

江戸患い

江戸患い

お江戸には白米の流通が多く、これによるビタミンB1不足から脚気を患う銀シャリ好みの贅沢者が多数存在。かの勝海舟の父も脚気だったとか。
脚気になっても浮世を忘れられず外出しているご様子。

二八蕎麦

二八蕎麦

市の見物客をみこして大店の間にちゃっかり開店した二八蕎麦の「三河屋」。二かける八は十六文。一文を20円として320円也。そうとう繁盛しないと家賃が払えませんわ。

十軒店2
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花売り

花売り

十軒店では雛市。ひなまつりに欠かせないのは桃の花。風情を運ぶ花売りが多く出て風香る三月。

花売り2

独身女性の引越し

独身女性の引越し

こちらはひな祭りはどこ吹く風と忙しい引越しの女性と荷運び。明暦の大火以後、車付きのタンスに燃え移り被害が拡大したことをうけ車付きのタンスは禁止。車付きのタンスなら一人で押して引越し出来たほど江戸の庶民は身軽。

獅子舞

獅子舞

今も残る縁起物の獅子舞。太鼓の打ち手と獅子のセット。


次は駿河町。日本一の豪商・三井越後屋の町へ。

三越周辺へとつづく

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