名曲の桜坂

名曲の坂道「桜坂」

そもそも桜、ソメイヨシノが一般化したのは明治期のこと。なので桜坂という名の坂道は比較的新しいものです。
東京には桜坂がいくつかあります。いずれも景観を保つために街路に桜を植え、その季節にはフルブルームを誇り、名曲を生み出すものもあります。

赤坂の桜坂

赤坂の桜坂赤坂の桜坂は明治の中頃に開削され、戦前まで坂下に大きな桜の木があり、桜坂と命名されましたが、その樹は今は無く、近年植えたソメイヨシノが萌えています。都会の味気ない風景も桜があると一変します。

赤坂桜坂

赤坂の桜坂坂上から
赤坂の桜坂坂上から。

六本木さくら坂

東京タワーが見えるけやき坂
東京タワーが見えるけやき坂。

六本木ヒルズの裏には、欅坂46・けやき坂46のけやき坂の南側に並行して下る「さくら坂」があります。
六本木ヒルズ再開発から15年を経て街路樹の桜が道に覆いかぶさります。坂中腹にはさくら坂公園(通称ロボロボ公園)があり未来の「さくら坂46」たちが遊びます。

さくら坂公園
さくら坂公園のロボットトーテムポール。
六本木ヒルズと桜
六本木ヒルズとさくら坂の桜。

赤坂の桜坂と区別するためか、六本木の方は「さくら」とひらがなで表記しています。

六本木さくら坂

六本木さくら坂

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古い桜坂、名曲が生まれた桜坂が旧中原街道、大田区田園調布本町にあります。古いと言っても大正時代のことですが。

桜坂

東海道の裏街道・中原街道

旧中原街道は古くは鎌倉街道の一部。東海道ができる前の主要道です。海沿いに東海道が出来たのちも、中原街道は険しいが距離的には最短ルートを取れるため物流に利用されてきました。東海道の裏街道、物流路とも云え、赤穂浪士たちも目立たぬように中原街道を使って江戸入りしたと云います。

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沼部の大坂から「桜坂」に

平安時代の延喜式や鎌倉時代の吾妻鏡にも記されている「丸子の渡し」。
神奈川平塚の中原から続く中原街道は多摩川を丸子の渡しで渡ると、最初の難関が急勾配の「沼部の大坂」。

古地図:明治39-42年(1906-09年)2万分の1正式図測図より青矢印が沼部の大坂の位置。
古地図:明治39-42年(1906-09年)2万分の1正式図測図より旧中原街道青矢印が沼部の大坂の位置。丸子の渡しがあります。
古地図:昭和3-11年(1928-36年)1万分の1地形図より旧中原街道、青矢印が桜坂の位置。
古地図:昭和3-11年(1928-36年)1万分の1地形図より旧中原街道青矢印が桜坂の位置

桜坂標石大正十二年(1923年)中原街道の改修工事が行われ、道幅を拡張。「沼部の大坂」を切通し勾配を緩やかにし自動車通行できるようにします。緩やかになった沼部の大坂の脇には桜を植え「桜坂」と命名。今の坂名柱の前にある壊れた石柱がそのときのものです。

沼部の桜坂

以前の大坂の勾配は写真左の側道ぐらいあったと思われ、急峻かつ長いスロープを持っていたようです。

桜坂側道

沼部駅踏切昭和九年(1934年)多摩川上流200mに丸子橋を架橋。丸子の渡しも廃止され、新中原街道が整備されます。

旧中原街道を下り、東急多摩川線沼部駅の踏切を渡り、多摩川の土手に登ると……

桜坂にも勝る春らしい風景が広がります。どこかで見た風景?

シン・ゴジラのタバ作戦

そう、ここはシン・ゴジラ「タバ作戦」か展開されたところ。近くの多摩川浅間神社は司令部が置かれたところです。

多摩川神社
多摩川浅間神社。

シンゴジラ多摩川神社

多摩川神社石段

シン・ゴジラ多摩川神社司令部

多摩川神社展望台

シン・ゴジラ

どうやらシン・ゴジラは中原街道を歩いているようで、桜坂は無事のようです。歩きづらそうですが首都中枢に向かっています。

東京駅対ゴジラを参照

桜橋

昭和37年(1962年)桜坂の中腹に陸橋「桜橋」が架橋され、赤がワンポイントとなって映えています。

桜橋

桜橋

桜橋から坂上を見る。
桜橋から坂上を見る。

名曲「桜坂」

田園調布駅
田園調布駅

むかし、田園調布に住む友人が沼部の桜坂に花見に行こうと言ったのを思い出します。沼部は東急多摩川線、田園調布から二つ目の駅。
不精な私は、田園調布駅前にも桜は咲いているし、近くの宝来公園にも咲いているからと受け流し、駅前の焼鳥屋で呑んでイイ気持ちになり、宝来公園で桜を愛でて、ココは縄文人の集落があったところなどと一通りの、ありきたりなウンチクを述べたて散歩して帰ったものです。

宝来公園
宝来公園。

沼部の桜坂が有名になったのは、その後です。

デビュー前の福山雅治はこの辺りに住み、この沼部の桜坂を舞台に名曲「桜坂」を生み出しています。

桜坂

かの友人の家は売りに出され、知らない表札に変わり、それを見たとき、桜の薄紅色が少しだけ涙色に映ります。

季節は変わり、人も変わり、一年のうち二週間だけ色づき香り、人々が集まり散ってゆき、これと言って変わりのない日常を取り戻すであろう桜坂です。

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