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菊坂エリア(菊坂・鐙坂・炭団坂)−動く古写真−

文京区本郷の菊坂は下町情緒と数々の文豪の香りが漂うエリア。

文豪のひとり、樋口一葉の旧居跡が菊坂下道にあります。
菊坂下道には、東大下水(ひがしおおげすい)という下水が流れていました。

明治41-42年一万分の一測図(菊坂周辺)
明治41-42年一万分の一測図より菊坂周辺。不鮮明ですが青いライン(東大下水)がみてとれます。

樋口一葉像菊坂下道は川というわけではなく道の脇に下水が通っていてドブ板を渡していたようです。

一葉一家は菊坂下道から南に少し入った路地裏にある借家に住んでいました。

樋口一葉が使った井戸。

樋口一葉が使った井戸
樋口一葉が使った井戸。

樋口一葉一家が使った井戸が残っていて井戸端会議の声が聞こえてきそうです(ここは一部私道なので訪れるとき、私語は厳禁)。近隣の迷惑にならないようにお願いします。

一家は明治23〜25年(1890〜1892年、一葉18〜20歳)まで、ここに住みましたが、一葉は安藤坂の中島歌子の歌塾「萩の舎」に住み込み女中をしながら学んでいた時期もあったようです。

この頃の一葉は朝日新聞の小説家・半井桃水に一目惚れして師事。そんなことは普通、発覚しないものですが、一葉が亡くなる時、日記は焼いてくれと頼まれた妹。

がしかし、一葉の作品を残そうと日記も発表してしまいます。
夏子(一葉の本名)の可憐な娘心も明らかになり、そのことを、一葉の死後16年経ってから知った半井桃水は目が点だったといいます(・_・)。

菊坂から菊坂下道に降りる階段

実はこの項の初稿は2014年11月。好きだった風景も変わってゆきます。

2014年11月、菊坂から菊坂下道へ降りる階段坂。
2014年11月、菊坂から菊坂下道へ降りる階段。
2014年11月、階段の下にあった床屋。

三年も経つと、下町情緒を保っていた菊坂も時代の波に呑みこまれます。

2017年の風景

2017年11月現在。
2017年11月現在。

昔ながらの床屋さんは廃業。しかしながら、階段脇の住宅は手の込んだ造りを今日まで残しています。

菊坂の木造住居

階段脇の住宅

銭湯「菊水湯」も廃業し、今ではマンションが建ちますが「菊水」の鬼瓦だけ残ります。

2014年11月、鎧坂下の菊水湯。
2014年11月、鎧坂下の菊水湯。
2017年11月。

菊水湯の古写真を探していると、1950年代の、とある古い映画のスナップを発見!щ(゚Д゚щ)。

この映画は林芙美子原作、成瀬巳喜男監督の「晩菊」。英題を「Late Chrysanthemums」といい、海外で人気があるようです。

菊坂を舞台にした映画「晩菊」

晩菊(1954年製作)は菊坂をロケ地にしていて、六十数年前の菊坂の情景を見ることができます。

晩菊 Late Chrysanthemums

東宝のポスターと海外版を比べると、なんとなく人気の秘密がわかるような気がします。

旅館や下宿が多かった本郷。
旅館で働く母を息子が訪ねるシーン。障子越しの向こうに中庭があり、奥行きを創り出しています。

日本家屋独特の室内。障子・ふすま・窓が織りなすモンドリアンのような平面構成には魅せられるものがあります。
なるほど、海外での人気の理由がわかります。

実はこの家、
樋口一葉の井戸の前にある設定になっていますщ(゚Д゚щ)。

玄関の向こうに樋口一葉の井戸が見えます。

去っていく男を井戸だけが見送ります。

では映画の一部をご覧ください。
まるで動く古写真ですщ(゚Д゚щ)。

冒頭から樋口一葉が通った質屋「伊勢屋」前から菊坂を撮っています。

菊坂

質屋「伊勢屋」前から
左側が質屋「伊勢屋」。
樋口一葉が通った伊勢屋質店。
樋口一葉が通った伊勢屋質店。

子供たちが登って行くのは、宮沢賢治下宿前の階段。階段の向こうの家の二階に賢治は下宿していました。

宮沢賢治下宿先前の階段。

宮沢賢治旧居跡
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金を借りに来た男から逃げる主人公。

金を借りに来た昔の男から、逃れるように、階段を登る主人公。

菊坂へ登る階段

また、映画には、こんな幻想的なシーンもあります。

朝もやの中、菊坂下道を登って行く新聞配達の青年。

菊坂下道

金田一京助・春彦が坂上に住んだ鐙坂(あぶみ坂)もこの映画には、少しだけ写っています。

鎧坂

鎧坂

金田一京助・春彦旧居跡
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鐙坂

鐙坂説明板
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また、炭団坂(たどん坂)上には坪内逍遥が住み「常盤会」という寄宿舎を提供。正岡子規も寄宿しました。

炭団坂

坪内逍遥旧居・常盤会跡
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文豪の足音が聞こえてきそうな菊坂エリア。
時の流れとともに変わりゆきますが、古いもの自体、古いものの痕跡が残ります。

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